岡野隆さんの『詩誌時評・句誌』『角川俳句』の10連投です。もうちょっと岡野さんの俳句時評は残っているのですが、それはまた来月以降に。10本書いていただきましたから十分ですね。お疲れ様です。
俳句の世界、つまり俳壇が難しい所だというのは、実際に俳壇を知っている人にしかわからないでしょうね。漠然と俳句というものがあり俳人という人たちがいて、俳句愛好者も大勢いると思っている方は、俳壇が熾烈な権力闘争(勢力争い)の場であることをまったく知らないと思います。俳句は人生にも生活にも余裕がある人が詠むというイメージがありますが、実態はぜんぜん違う。俳壇は本当に息苦しい。
で、俳壇内部には昔から、五七五に季語のいわゆる伝統俳句と、それだけでは不十分だと考える前衛俳句(反伝統俳句、無季無韻俳句etc.)の対立があります。ただ岡野さんが書いておられるように、それ以前の問題として、俳句はお遊び文芸なのか、はたまた文学なのかという大問題があります。そして実態を見れば俳壇はお遊び文芸を奨励しています。商業句誌はほとんどのページを初心者俳人向けのノウハウで埋めていますし、俳句単行本の大半も、どうやって俳句を書くのかというノウハウ本で占められています。つまり誰でも俳句を書けるのだから、みなさん楽しく俳句を詠みましょうというお遊び文芸を思いっきり喧伝することで俳壇は成り立っている。しかし俳人さんたちは口を開けば俳句は文学だと言う。いろんな言い訳はあるでしょうが、明らかに実態とは違います。
ただ岡野さんは、お遊び文芸としての俳句と文学としての俳句を対立させない方がいいというお考えのようです。俳句は小説や自由詩といった文学とは質的に違うという考えが岡野さんの思考の基盤にあります。また実際、いくら俳句は文学だと主張しても、今の俳壇はもちろん、未来の俳壇が文学一色に染まることは決してないでしょうね。変わらないのなら、俳句はお遊び文芸であることに何らかの本質がある。原理的に考えてみる必要があると思います。
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『No.118 神野紗希「これから俳句の話をしよう」(2019年01月号)』■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『No.119 長谷川櫂「死の種子」(角川俳句2019年01月号)』■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『No.120 田邊恭子「まるい輪郭」(角川俳句2019年03月号)』■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『No.121「大特集 再発見!高浜虚子」(角川俳句2019年04月号)』■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『No.122 鴇田智哉「俳句の不謹慎さ、そして主体感」(角川俳句2019年05月号)』■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『No.123 葛尾さとし「金の鈴」(角川俳句2019年06月号)』■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『No.124 岡野隆 諏佐英莉「やさしきひと」(月刊俳句界2019年01月号)』■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『No.125 岡野隆 特集「兜太と一茶」(月刊俳句界2019年02月号)』■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『No.126 岡野隆 特集「長寿結社の秘訣」(月刊俳句界2019年03月号)』■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『No.127 岡野隆 特集「横山白虹」(月刊俳句界2019年04月号)』■
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