星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第15回)をアップしましたぁ。〝雨夜の品定め〟が終わりました。これからいよいよ実践ということになります。とはいっても光源氏は女性に関してはすでに実践しているわけですが。推定では光源氏16歲から19歲頃だと考えられています。
過剰な意味を見出すと蓮實重彦さんのような創作批評になってしまいますが、雨は小説の小道具としてよく使われます。雨が降っていると出かけるのが億劫になる。部屋の中にこもってしまう。男女だと雨が二人を結び付けるきっかけになったりしますね。
「帚木」の帖では若い男たちが部屋に閉じ込められて女談義をします。現代でもよくある女談義、ではないですね。徒然に話しているうちについ口が滑ったというような話が再録されているはず。そして光源氏はほとんど口を挟まない。黙って聞いている。
作者の紫式部が「雨夜の品定め」で男たちが語る女性像を理想と考えていたかどうかは疑問です。社会的処世術としては「そんなものよね」と思っていたかもしれませんが、物語作者としては身勝手で自己中心的な男の本音を書いて、読者である女性たちに伝えたと考えた方がいい。もちろんその受け止め方は読者それぞれ。ただ理想のプリンス光源氏は、数多の男たちのステレオタイプの女好みを超えてゆく。その伏線でもあります。
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第15回)縦書版■
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第15回)横書版■
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