大篠夏彦さんの文芸誌時評『文芸5誌』『文藝』『群像』『新潮』『すばる』『文學界』をアップしましたぁ。大篠さんの純文学誌時評7本です。今回は文芸5誌全部の網羅です。だんだん理想的文芸誌時評に近づいていますね。来年はもうちょっとコンテンツアップスピードを上げてもらいたいと思います。
石川が見ていても、現代、少なくとも21世紀初頭の純文学界は〝女性作家〟の時代だと思います。男の子の独断場だった〝社会的テーマ〟が掴みにくくなっているのが一番大きな原因でしょうね。たとえばコロナを題材にした小説は純文学、大衆文学を問わずたくさん書かれています。しかし大震災と同様にコロナは社会問題になりにくい。行政の内側に食い込んだ小説なら社会問題化できるかというとそうでもない。様々な情報が錯綜しているのが現代情報化社会なわけで、これといった中心軸が立たない。これが正しい、あるいは間違っているといった利害対立を軸にした小説は難しいんですね。
女性作家の場合、コロナを題材にしてもテーマは社会軸に行かない。テレワークでの食事の問題や家族や恋人との関係の変化などが小説主題になります。人間が持っている根源的生命力のようなものが浮かび上がってくるわけです。逆に言えばそういった主題しか確実なものがない。ある意味純文学は底を打ったと言えるかもしれません。もち悪い意味ではありません。底とはこれは動かし難い表現の基盤ということです。
■ 大篠夏彦『文芸五誌』『宇佐美りん「くるまの娘」』(文藝2022年春号) ■
■ 大篠夏彦『文芸五誌』『川上弘美「不眠症の伯爵のために」』(群像2021年08月号) ■
■ 大篠夏彦『文芸五誌』『中西智佐乃「祈りの痕」』(新潮2021年08月号) ■
■ 大篠夏彦『文芸五誌』『大鶴義丹「女優」』(すばる2021年07月号) ■
■ 大篠夏彦『文芸五誌』『小川洋子「花柄さん」』(すばる2021年08月号) ■
■ 大篠夏彦『文芸五誌』『山野辺太郎「恐竜時代が終わらない」』(文學界2021年07月号) ■
■ 大篠夏彦『文芸五誌』『樋口恭介「BV-47」』(文學界2021年08月号) ■
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