岡野隆さんの詩誌時評『句誌』『角川俳句 2021年01月~03月号』『月刊俳句界 2021年01月~02月号』をアップしましたぁ。だいぶ前に確かアメリカの人類学者が移転前の築地の仲買業者をフィールドワークしているドキュメンタリーをテレビで見たことがあります。社会人類学はレヴィ=ストロースが基本を作ったわけですが、彼の弟子筋の学者たちが世界中で興味深い共同体のフィールドワークを今も行っているのですね。築地仲買業者は人情・血縁で複雑に結ばれています。
んで俳句界といふか俳壇は、人類学的フィールドワークにはぴったりの場所だと思います。小説と自由詩は基本、明治以降の近代的自我意識に沿った文学風土です。いろいろ問題はありますが、それなりに作品実力主義でフィールドが動いている。しかし俳壇は違いますねぇ。歌壇よりもさらにわかりにくい。歌壇はなんやかんや言ってリベラルですしある程度の実力主義フィールドですからね。
この俳壇のわかりにくさは日本文化や日本社会のわかりにくさに直結しています。文学だけでなく人間関係が複雑に絡み合っている。結社同士の勢力争いもある。文学より人間関係と結社の力の方が強いくらい。またあえて作品実力主義で評価しないのではなく、そもそも俳人の誰も、俳句評価の明確な基準をつかんでいない。正確に言うと評価基準が割れている。しかし林立する評価基準を統合しようという動きはまったく起こらない。そのため現世的俳人栄誉と後世的作品評価が別物になったりします。俳壇は居心地のいい人情世界ですが孤立した排他的村の寄せ集めでもある。フィールドワーク調査すると面白いでしょうねぇ。
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『角川俳句』恩田侑布子「拙を守る-夏目漱石」(2021年01月号) ■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『角川俳句』櫂未知子「緊張感を」(2021年02月号) ■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『角川俳句』宮部みゆき「ぼんぼん彩句(1)」(2021年03月号) ■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『月刊俳句界』特集「師を語る」(2021年01月号) ■
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『月刊俳句界』川名大「いわゆる〈社会性俳句・前衛俳句〉」(2021年02月号) ■
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