大篠夏彦さんの文芸誌時評『文芸5誌』『文學界 2020年07~2021年01月号』をアップしましたぁ。文學界時評7連投です。このくらい時評がまとまっていると、批評対象の姿が見えてくると思います。作家や編集者、読者を含め、日本の純文学界には確実に芥川賞恐怖症(フォビア)が蔓延しています。なぜそんなことになるのかと言えば、対象を正確に捉えていないからです。
大篠さんの今回の時評を読んでも、文學界がLGBTをテーマとする小説を優遇していることがわかります。つまりそれが文學界がそこはかとなく考える〝売れ筋〟ということになります。純文学の世界は地下アイドルと同じで、特定の読者層を狙っているのかな、ともちょっと思いますね。またこの売れ筋の設定、んー、言っちゃ悪いけど底が浅い。
小説を書く作家はもちろん、雑誌の編集も人間がやっていることです。無条件の権威は存在しない。ただ日本の純文学文壇では、芥川賞作品であれば優れた小説で〝まかり通る〟雰囲気がいまだ続いています。しかしまー虚心坦懐に読めば、んなことぜんぜんない。
ほんじゃ作家はどーすればいいのか。活用することですね。社会的通念はそう簡単には変わらない。たいていの純文学作家は通念に飲み込まれて文壇人になってゆく。もしくは自分から文壇人になりたいと熱望している。それを十分理解しながら裏をかくくらいの高い社会性がなければ、これからの純文学の世界で生き残っていけないでしょうな。対立は華々しいですがたいてい不毛です。対象を底の底まで理解してその上をゆくのが最も効果的です。
■ 大篠夏彦『文芸誌時評 文芸5誌』いとうせいこう「夢七日」(文學界 2020年07月号) ■
■ 大篠夏彦『文芸誌時評 文芸5誌』岡崎祥久「キャッシュとディッシュ」(文學界 2020年08月号) ■
■ 大篠夏彦『文芸誌時評 文芸5誌』小暮夕紀子「裸婦」(文學界 2020年09月号) ■
■ 大篠夏彦『文芸誌時評 文芸5誌』いとうせいこう「夜を昼の國」(文學界 2020年10月号) ■
■ 大篠夏彦『文芸誌時評 文芸5誌』仙田学「剥きあう」(文學界 2020年11月号) ■
■ 大篠夏彦『文芸誌時評 文芸5誌』鴻池留衣「わがままロマンサー」(文學界 2020年12月号) ■
■ 大篠夏彦『文芸誌時評 文芸5誌』小佐野彈「したたる落果」(文學界 2021年01月号) ■
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