佐藤知恵子さんの文芸誌時評『大衆文芸誌』『オール讀物』の4連投です。『No.132 芦沢央「埋め合わせ」(オール讀物 2018年07月号)』、『No.133 綾瀬まる『マイ、マイマイ』(オール讀物 2018年08月号)』、『No.134 ビートたけし『キャバレー』(オール讀物 2018年09月号)』、『No.135 佐々木愛「プルースト効果の実験と結果」/嶋津輝「一等賞」(オール讀物 2018年10月号)』です。
小説にはいろんな書き方があっていいわけですが、オール讀物など大衆小説雑誌に掲載される小説は、基本的にストーリーを読ませる小説です。事件が起こり、その延長線上にオチがある。オチがないと読者は納得しない。ああ面白かったと言ってくれないのです。池波正太郎は『木戸銭もらってんだから、楽しませなくっちゃ』と言ったそうですが、大衆小説家らしいですね。
ただ純文学は、独自性というより大衆文学のアンチとして存在しているような面があります。ストーリーがない、事件がない、オチがないの三重苦であります(笑)。もちそれ以上の何かがあれば、すんばらしい純文学小説といふことになるわけですが、それがなかなか見つからない。文体的独自性ほにゃららといったものも、自由詩などを読み慣れた人には底が浅い。たいていどっかから引っ張ってきた密輸入品です。
純文学の中で名作と呼ばれる作品で、もんのすごく読むのに苦労する小説はあまりないと思います。文体に凝っても限りがあるわけで、現実を描く小説ではなんからの事件が起こり、そのオチがなければならない。それに純文学と大衆文学が日本文化の花形であった時代はとっくに終わりました。純文学作家が独自性を考えるなら、まず大衆小説の書き方のノウハウを体得してからの方がいいように思うのですが。
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評『大衆文芸誌』『オール讀物』『No.132 芦沢央「埋め合わせ」(オール讀物 2018年07月号)』 ■
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評『大衆文芸誌』『オール讀物』『No.133 綾瀬まる『マイ、マイマイ』(オール讀物 2018年08月号)』 ■
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評『大衆文芸誌』『オール讀物』『No.134 ビートたけし『キャバレー』(オール讀物 2018年09月号)』 ■
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評『大衆文芸誌』『オール讀物』『No.135 佐々木愛「プルースト効果の実験と結果」/嶋津輝「一等賞」(オール讀物 2018年10月号)』 ■
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