高嶋秋穂さんの歌誌時評『角川短歌 2020年5~9月号』&柴田葵歌集『母の愛、僕のラブ』書評をアップしました。お歌の世界は活気がありますね。句誌や詩誌――あまりにもコトがないせいか取り上げて批評したい人がいないですが――と比べると歌壇の活気は非常に目立ちます。小説誌と比べても歌壇は活気があると思います。
高嶋さんは与謝野晶子や河野裕子さん、馬場あき子さんらを取り上げておられますが、今は特に女性作家の時代じゃないかと石川は感じるところがあります。書評で取り上げた柴田葵さんも女性です。もちろん穂村弘さんは歌壇のスーパースターのお一人ですが、男性歌人がすごく目立っているという感じはしませんね。女性歌人の方が面白いという印象です。
ただそれが手放しでいいことかと言うとそうでもない。1980年代に自由詩の詩壇で女性詩が一世を風靡しましたが、これは現代詩と呼ばれる表現に、もはや女性性という表現しか新たな表現領域が残っていなかったから、という面があります。現代詩というジャンルというか文学潮流は、80年代の女性詩の時代で実質的に終わりです。そこで現代詩が終焉した。それ以降は長い長いポスト現代詩の姿を探る低迷期に入っています。
女性性が目立つということは、作家の表現軸から社会性が失われたということでもあります。塚本的な戦後短歌の軸がなくなったわけです。すると確実なものは幼年期とか生命になってくる。女性性と相性がいいですね。穂村さんの短歌も幼年期を歌ったものが多い。
今後男性的な観念軸――社会全体を俯瞰したような表現パラダイム――を確立できるかどうかはわかりません。ただ男の子の最も魅力的表現は、天に翔け登るような浮世離れした強烈な観念です。文学はジェンダーと無縁ですから女性作家は当然様々な形で女性性を活用します。男性もそうしていいわけですが、それがなかなか難しい。「おおっ」と唸るような男性作家が現れるといいですね。
■ 高嶋秋穂さんの歌誌時評『角川短歌』 2020年5月号 ■
■ 高嶋秋穂さんの歌誌時評『角川短歌』 2020年6月号 ■
■ 高嶋秋穂さんの歌誌時評『角川短歌』 2020年7月号 ■
■ 高嶋秋穂さんの歌誌時評『角川短歌』 2020年8月号 ■
■ 高嶋秋穂さんの歌誌時評『角川短歌』 2020年9月号 ■
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