ドイナ・チェルニカ著、ラモーナ・ツァラヌ訳、『少女と銀狐』前書きと第1章をアップしました。ドイナ・チェルニカさんはわたしたちには未知の作家ですが、ルーマニアで高い評価を受けておられる作家でジャーナリストです。
ドイナさんに書き下ろしていただいた『文学金魚の友達のみなさんへ』にあるように、彼女は小説家というよりも物語作家を自任しておられます。ちょっとエリナー・ファージョンを思い出しますね。ドイナさんは子供の頃に日本の民族童話を集を読んで感動した思い出を書いておられますが、ファージョンも自伝でアラビアンナイトなどを読み耽ったと書き残しています。小説は基本的にストーリーを追う芸術ですが、物語にはそれとはまた違う面があります。ある文化全体の雰囲気を伝える力を持っています。
そのあたりの機微を、訳者のラモーナさんは『この物語には、ルーマニア人の世界観、特に自然観が鮮やかに映し出されていること、そしてルーマニアの言葉の特徴やルーマニア文化の根本的な要素がたくさん詰まっていることに気づきました』と書いておられます。ラモーナさんは研究者で演劇批評などを書いておられますが、彼女の能楽への興味は、森のイメージと繋がっているのではないかと文学金魚首脳陣と話したことがあります。
柳田国男や折口信夫の民俗学にあるように、日本では神様は海からやってくる。しかし得体の知れない魑魅魍魎は山の中に棲んでいる。能楽の幽鬼って、だいたい山の中で現れますね。『少女と銀狐』も森の中の物語のようですが、神秘の森の中で西と東は底の方でつながっているのかもしれません。
■ ドイナ・チェルニカ著 ラモーナ・ツァラヌ訳『少女と銀狐』前書き ■
■ ドイナ・チェルニカ著 ラモーナ・ツァラヌ訳『少女と銀狐』第1章 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
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