萩野篤人 文芸誌批評 No.005 松田いりの「ハイパーたいくつ」(文藝二〇二四年冬季号)、連載小説『春の墓標』(第10回)、連載評論『人生の梯子』(第07回)をアップしましたぁ。今回は萩野さんらしいコンテンツ3本です。萩野文学のテーマである笑い、絶望、そして生が、文芸批評と評論と小説で表現されています。
ところが、わたしたちはまぼろしに左右されてばかりいる。
幼児期のトラウマといわれるものも、そんなまぼろしのひとつだ。ほかでもない、トラウマとは――亡霊の声である。過去に置き去りにされ、成仏できずにさ迷い続けているもうひとつの「いま」、もうひとつの自分自身の声なのである。わたしたちはいつだって亡霊の声に呼ばれているのだ。
萩野篤人 連載評論『人生の梯子』
萩野篤人さんの評論『〈寓話〉死んだらそれきり。』も同様ですが、彼は成仏や来世といった救済を一切認めません。執拗なまでにそれを解体しようとする。ではこの世は、人間の生は無なのか、無常なのか。論理的帰結としてはそうなります。評論のタイトル通り「死んだらそれきり」です。しかし奇妙なことに彼は絶望しない。絶望もまた救済の一種として排除されています。では何が残るのか。
恐らく〈亡霊の声〉でしょうね。亡霊の声が彼を生かしめる。その声にじっと耳を澄ますと笑い声が聞こえてくる。小説『春の墓標』は大笑いしながら読んでいい絶望を生きるための小説です。
■萩野篤人 萩野篤人 文芸誌批評 No.005 松田いりの「ハイパーたいくつ」(文藝二〇二四年冬季号)■
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