萩野篤人 連載小説『春の墓標』(第04回)&新連載評論『人生の梯子』(第01回)をアップしましたぁ。『春の墓標』はいわゆる介護小説ですが、認知症でお父さんがじょじょに壊れてゆく様子は身に染みますね。誰もがそうなりたいと思ってなるわけではありません。でもそれが来る時には来る。残酷な現実です。
今月から始まる新連載評論『人生の梯子』は、既発表の『アブラハムの末裔』『死んだらそれっきり』と並ぶ萩野さんの評論三部作です。テーマは人間の生と死です。小説『春の墓標』にも共通するテーマが評論という論理的な形で表現されています。
もう少し萩野さんの「人間の生と死」というテーマについて説明すると、それは〝人間の生を巡る理不尽〟の考察だと言っていいと思います。人間には試練が与えられます。軽重はあるにせよあらゆる人間が試練を経験する。ではなぜ人間には試練が与えられるのか。もっと言えば、自分で望んでもいない試練がなぜ降りかかってくるのか。
これは旧約聖書アブラハムの試練にも表現されている根源的な問題です。その苦しさから神に救いを求める人は多い。もしかするとそれは正しいのかもしれません。しかし極東の思考者として萩野さんは神的超越性に救済を求めません。赤裸々な現実に曝されながらその意味と新たな救済のようなものを考察しておられます。業の深い評論です。
■ 金魚屋 BOOK SHOP ■
■ 金魚屋 BOOK Café ■