佐藤知恵子 大衆文芸誌時評『小説すばる 2021年10、11月号』をアップしましたぁ。石川が見ていても、純文学誌、大衆小説誌ともにすばるさんは元気があります。誌面構成もバラエティに富んでいて面白い。守りに入っていない感じがします。
鶴山裕司さんが『夏目漱石論』で漱石先生の大予言について書いておられます(正確に言うと小説『野分』での作中講演の予想です)。漱石先生は文化の流れを3期に分けて考えていた。1期目は「初期」(過渡期)で作品は偶然と僥倖によって評価されるという定義です。明治の40年がそれに当たるというのが漱石先生の考えです。尾崎紅葉、幸田露伴、樋口一葉らの時代です。
2期目は「中期」でここが文化全盛期になる。初期の試行錯誤を経て新たな文化が本格的に花開く時期です。『野分』は明治40年発表ですが、ここからが文化の本番ということです。漱石、藤村、志賀直哉、芥川龍之介、谷崎潤一郎、川端康成らの時代です。
3期目は「後期」で文化衰退期に当たる。2期の全盛期の文化を継承・模倣しながらじょじょに文化は衰退してゆくのだと漱石先生は論じている。
で、漱石先生の大予言は40年単位なので初期(過渡期)は1868-1907年まで、中期(文化全盛期)は1947年まで、後期(文化衰退期)は1987年までということになります。そして1987年から2027年までが再び混沌とした初期(過渡期)ということになる。
この予想、けっこう当たっているのではないかと思います。1947年から1987年までを後期(文化衰退期)と捉えるのは、戦争が終わってジャーナリズム全盛期となったのでちょっと前まではピンと来なかったのですが、今は「そーだなー」という感じです。小説でも詩でも新たな試みの土台は戦前までにほぼ出つくしています。1947年―1987年の後期(文化衰退期)にそれを蕩尽し尽くした印象です。戦後文学的パラダイム、1990年代にほぼ完全に霧散しましたからね。
で、1987―2027年まではまた混沌とした初期(過渡期)。これも当たっている感じ。文学界はもちろん社会全体が試行錯誤状態です。今2023年3月ですが2027年までほぼ5年ある。この5年は多分長い。インターネットは既に社会に不可欠のインフラですが、もうすぐ量子コンピュータが実用化されさらに情報伝達スピードが加速し情報量が激増する。そうとう色んなことが変わりますね。文字分野で言えば、新聞雑誌などはマジの生存競争にさらされるでしょうね。マスメディアがなくなるとは思いませんが、多くの新聞雑誌、あるいはテレビメディアなどが5年後には統廃合されている可能性がある。文学業界も間違いなく現状のままではいられない。
さて、そうだとすると、皆さんどうしますぅ?。
■No.010 佐藤知恵子 文芸誌時評-周防柳「好色五人女列伝 おさん茂兵衛」(小説すばる 2021年10月号)■
■No.011 佐藤知恵子 文芸誌時評-中真大「風を食らって」(小説すばる 2021年11月号)■
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