池田浩さんの『大学文芸誌時評』『三田文學 2021年冬季号、春季号)をアップしましたぁ。久しぶりの小説批評です。小林エリカさんの「交霊」と滝口葵巳さんの「愛しのクリ-レ」を取り上げておられます。三田文學さんは詩あり小説あり海外文学あり評論、短歌、俳句時評ありと百花繚乱ですが、やはり小説に勢いがないと文芸誌の活気は出ませんね。
基本的には純文学なのですが、小林さんの「交霊」も滝口さんの「愛しのクリ-レ」も起承転結のある物語小説です。池田さんは「有名文学賞などの素晴らしいお墨付きがあるから読めと言われても「これは修学旅行で強制的にやらされる座禅の修行ですか」と言いたくなるようなクソつまらない純文学小説は、どう考えても今の世の中、下火にならざるを得ないだろう。小説は事件が起こる物語であり、かつ作家がどうしても表現したいテーマがあることで読み進められるかどうかが決まる。純文学的アトモスフィアなど糞食らえですな」といささか乱暴なことを書いておられますが、基本石川も賛成です。エンタメ的要素も含め、小説という表現に求められる要素をすべて満たした上でそれ以上の何かが表現されているのが本来的な純文学だと思います。
三田文學さんに限りませんが、純文学系の文芸五誌は今の難しい時代を反映して小説誌なのかなんなのかよくわからない誌面構成になっていることがしばしばです。試行錯誤せざるを得ない時代なわけですが、小説であれ詩であれなんらかの形で軸を立ててゆく努力は必要でしょうね。
■ 池田浩『大学文芸誌時評』小林エリカ「交霊」(三田文學 2021年冬季号) ■
■ 池田浩『大学文芸誌時評』滝口葵巳「愛しのクリ-レ」(三田文學 2021年春季号) ■
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