萩野篤人 文芸誌批評 No.001 中西智佐乃「長くなった夜を、」(「すばる」2024年09月号)、連載小説『春の墓標』(第05回)、連載評論『人生の梯子』(第02回)をアップしましたぁ。今回から萩野さんに文芸誌批評を始めていただきました。純文学5誌(文學界、新潮、群像、すばる、文藝)が対象になる予定です。文学者はそれぞれ表現の核を持っていますがリアルタイムの文学界の動向を知ることも大事です。小説を書いている人でもそのほとんどが文芸誌を一度も読んだことがないですよね(笑)。それではイカンのであります。
『人生の梯子』は主題がハッキリしてきました。梯子とは往相と還相のことです。仏教用語ですが往相は簡単に言えば悟りへの階段です。ただ仏教は面白い宗教で悟りには安住できないと説きます。悟りに達したら現世に帰ってこなければならない。それが還相です。じゃあ帰ってきて何をするのかといえば宗教的には衆生救済です。しかしそれは可能なのか。不可能ですね。しかしその不可能、矛盾にこそ仏教や宗教を超えた直観真理があるのではないか、というのが萩野さんの思想のように思われます。
介護小説『春の墓標』はある意味萩野さんの思想に基づく小説です。もちろん思想小説ではありません。極めて現世的で具体的です。恐らく救済はない。誰も助けてくれない。救いの手はどこからも差し伸べられない。しかしそれを冷たい裸眼で見つめ、比喩的に言えば落ちるところまで落ちなければなりません。するとどうなるのか。極論を言えば死ぬか笑うしかないですね。
■萩野篤人 文芸誌批評 No.001 中西智佐乃「長くなった夜を、」(「すばる」2024年09月号)■
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