池田浩さんの大学文芸誌時評、佐藤述人「つくねの内訳」(三田文學 2022年秋季号)をアップしましたぁ。三田文學さんは実質的に慶應大学が刊行している文芸誌です。大学文芸誌ですから三田出身作家や在校生、卒業生を優遇するのは当然です。ただ昭和時代には江藤淳さんが文芸5誌(文學界、新潮、群像、すばる、文藝)に次ぐ純文学誌というポジションを作り上げました。長い歴史とそれなりの権威がある文芸誌です。
最近の三田文學さんは合議制を取っておられるようです。編集委員を務めておられる三田の先生方がページを分け合い、それぞれの興味に応じた特集を組んでおられるようですね。そのため小特集が増えています。一時期はキリスト教系作家がよく登場していましたが最近では減りましたな。編集委員のどなたかが抜けたのかな。
で、石川が編集者目線で見ていて誌面配分のバランスはいいと思います。純文学誌の華はなんといっても小説です。小説が文学業界の華だと言ってもいいです。話題になり本が売れる可能性が一番高いのは小説なわけですから。ただ小説という俗な書き物は基本的に後衛です。思い切った試み、つまり現代を鋭く表現する前衛文学は詩のジャンルから生まれてくることが多い(本は売れないですけど)。そのいずれにも三田文學さんは目を配っておられます。
ただ分割編集のせいか、何がメインなのかよくわからない構成になっている印象がありますね。どの文芸誌でも顔になる作家はいるわけで、誰を顔にして世の中(といっても文学界ですが)にインパクトを与えるのかが文芸誌編集の大きな醍醐味です。文芸誌のプロデュース能力や機能と言ってもいいですね。そういった攻めの一手が希薄かな。しかし池田さんが書いておられますが最近の三田文學には小説秀作が掲載されています。三田文學さんに期待大です。
■ 池田浩 大学文芸誌時評 佐藤述人「つくねの内訳」(三田文學 2022年秋季号) ■
■ 金魚屋 BOOK Café ■
■ 金魚屋 BOOK SHOP ■