佐藤知恵子さんの『文芸誌時評』『大衆小説誌』吉川トリコ「余命一年、男をかう」(小説現代 2021年07月号)をアップしましたぁ。吉川さんの「余命一年、男をかう」は490枚の長編小説で小説現代さんで一挙掲載です。佐藤さんもちょいと気合いが入った時評になっています。490枚の小説、書くのにけっこう時間がかかるでしょうねぇ。内容から言っても1ヶ月とかで仕上げた小説ではないと思います。
詳細は実際にコンテンツをお読みいただければと思いますが、小説は200枚を超えたあたりから書き方を考えなければならなくなります。300枚になると、100枚、150枚、200枚でやっていた書き方では苦しくなります。これは小説技法の常識と言っていいですが、それがなぜなのかをプロの作家でもちゃんと考えた方は少ない。人間、成功体験に縛られますから、たとえば60枚、100枚で新人賞を受賞して、250枚くらいの中編小説で文壇内の賞を受賞したりすると、その方法で、まあエスタブリッシュした小説家に初めて許される長編小説に取りかかったりします。でもんー、そんなにうまくいかない場合がほとんどです。ベテラン作家でも、枚数と小説技法が噛み合っていない小説は案外多いです。
ただだからダメということはなくて、テーマを抱えている作家はそれなりに読める、読ませる小説になります。でも時間と労力をかける作品を、より素晴らしい小説にするためには技法が重要になります。技法はもちろん複数あります。複数の書き方の中から、簡単に言えば長編という長丁場でもムリがない技法でテーマを展開してゆくわけです。
もち石川は、ムリクリと言いますか、力任せの新人作家の長編小説、大好きです。勢いあるねーと思います。でも無意識の書き方では続かない。技法、技法というと、文学はインスピレーションで技法なんかいらないんだという反論が聞こえて来そうですが、天からインスピレーションが降ってくるのを待っていたのではプロの作家になれません。作品は量産できない。技法は不可能を可能にしてくれる。Aが書ける技法を我が物にすれば、B、C、Dが書けるようになる。書きにくい内容を書けるようにしてくれるのが技法です。
■ 佐藤知恵子『文芸誌時評』『大衆小説誌』吉川トリコ「余命一年、男をかう」(小説現代 2021年07月号)(No.006) ■
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