遠藤徹さんの連載マンガ『キノコの森』(第12回)&連載小説『物語健康法(入門編)』(第22回)をアップしましたぁ。『物語健康法(入門編)』は最終章「ワン・オン・ワン物語合戦」)(二)です。決闘編といったところです。
「わたしたちを葬っても、物語の力は消えないよ」
「そうかな、実のところ、いまだって物語の時代だよ。世の中は物語で溢れてるよ」
「それは、支配のための物語、いや、ちがうな。操作のための物語だ。情報を制限し、情報を操作し、そしてわかりやすい物語を垂れ流すことで、逆に人々から物語を奪う行為、物語を殺す行為だろう?」
「奴らにそんな見分けがつくかね? テレビにすがって生きてる連中、正義感を気取ってネットに書き込むことで高揚感を得てる連中が、自分たちが操られてるだなんて気付くと思うかね?」
「わたしはそう信じてる。わたしの物語、いやわたしたちの物語は、いまもネット空間に解き放たれたままだろうから」
「なるほど、ネット空間はある種無法地帯だからな。完全に君たちの物語の芽を摘み取ることは不可能だろう。だけど、もう誰もそんなものの存在に気付きはしないんだよ。他に飛びつくべき物語が、毎日大々的に投入されているからね。もっと扇情的なもの、もっと猟奇的なもの、もっと過激なものが次々と投入されている。そんなさなかで、君たちの地味な物語に目を向ける輩など、ほぼ皆無だといってもいいだろう」
(遠藤徹『物語健康法(入門編)』)
こういったところに遠藤さんの小説思想が表現されています。物語は諸刃の剣で、時に理路整然とした結末を人間に示します。だけどそれはしばしば巧妙なフェイクだったりする。しかし物語は本来、目的をもって利用されるものではなく、そこからまた新たな物語を生み出す原初的な力です。物語自体が創造的な力であるわけです。遠藤さんが論理などでは割り切れないホラー作家としてデビューなさった理由もこのあたりにあるのでしょうね。
■ 遠藤徹 連載小説『物語健康法(入門編)』(第22回)縦書版 ■
■ 遠藤徹 連載小説『物語健康法(入門編)』(第22回)横書版 ■
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