佐藤知恵子さんの文芸誌時評『大衆文芸誌』『オール讀物』の2連投です。高瀬乃一さんの「をりをり よみ耽り」、大島真寿美さんの「月かさね」を取り上げておられます。高瀬さんはオール讀物新人賞受賞作です。大島さんの作品は直木賞受賞作の『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』の続編というか、スピンオフ的作品です。
どんな世界でも権威というものは必要です。文学の世界では文学賞がそれに当たります。中でも実質的に文藝春秋社さんが主催しておられる芥川賞と直木賞は文学新人賞のトップであると同時に日本で最も有名な文学賞です。長い歴史に基づく権威があるわけです。
しかし石川はこの権威が揺らいでいるとハッキリ思います。そして作家たちも文学業界の編集者を含む業界人たちも、いまだに一種の〝芥川賞・直木賞フォビア(恐怖症)〟に罹っていると思います。芥川賞直木賞をもらわなければ一人前ではない、芥川賞直木賞は文句なしに素晴らしい作品が選ばれているのだという強迫観念のような恐怖症ですね。
でも時代は変わります。文学状況も大きく大きく変わってゆく。こんなこと自慢にもなんにもなりませんが、芥川賞直木賞はちょっと変じゃないかとハッキリ言い出したのは文学金魚が初めてだと思います。単なる妬みやそねみではないことは、時評を読んでいただければわかります。
作家も業界人もほぼすべて、戦後の半世紀近く芥川賞直木賞フォビアに冒され粛々とそれを翼賛し続けたと言ってもいいところがあります。権威は必要です。しかしスポーツのように結果がハッキリしない文学の世界では権威的指標は複数あった方がいい。また文学の評価基準は時代ごとに柔軟に変化するのが望ましい。文学者も文学業界というものも、元々は反権威的な土壌であったはずです。自分たちでタブーのような権威を作ってどうすんだぁと思いますね。
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評『大衆文芸誌』『オール讀物』『No.156 高瀬乃一「をりをり よみ耽り」』(2020年11月号) ■
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評『大衆文芸誌』『オール讀物』『No.157 大島真寿美「月かさね」』(2020年12月号)』 ■
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