小原眞紀子さんの連作詩篇『Currency』『人』(第28回)をアップしましたぁ。金魚屋から『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の小原さんの連作詩篇です。今回は『人』です。
人は線で描く
太さと細さは
混じりすぎず
だが共存して
人となる
人となったら
すぐ歩き出す
じっとしたまま
ペンを重ねると
そこで腐る
あるいは枯れる
よい加減で
さっさと出かける
(小原眞紀子『人』)
詩篇はどうやら、小原さんが人の絵(デッサン)を書いた時の作業を文字化したもののようです。抽象化された人(々)の姿が言葉で表現されてゆきます。『Currency』という詩篇はそのほとんどが天から現世(地上界)を眺めたような作品です。現代世界の抽象化でもあります。
石川はYouTubeの文学金魚ちゃんねるで自由詩の世界が追い詰められているからこそ、詩人たちに期待していると言いました。冷静に現状を見れば、自由詩の世界はホントに厳しい。短歌・俳句のような結社がないですから詩人たちは個々に孤立している。で、1980年代くらいまで自由詩の詩書がそこそこ売れていたのは〝現代詩〟といった自由詩の前衛表現に期待していた歌人・俳人が読者の多数を占めていたからだ、ということすら自由詩の詩人たちは気づいていません。
歌誌などを読んでいると、歌人たちはしばしば「もう自由詩に力はない、魅力がない」ということを言っています。でも狭い狭い詩の世界に閉じこもっている詩人たちはそんなことを言われていることにも気づいていません。創作人口は俳句、短歌、自由詩の順に少なくなり、必然的に読者も比例します。自由詩は一番読者が少ない。読者を取り戻すには、もはや詩壇という狭いエリアに閉じこもっていたのでは無理です。自己のジャンルを相対化して、何が自由詩とって最も大事なのかをつかまない限り、復調はないでしょうね。石川が小原さんのようなマルチジャンル作家に期待している理由です。
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『人』(第28回)縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『人』(第28回)横書版 ■
■ 金魚屋 BOOK SHOP ■
■ 第9回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第9回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 金魚屋の本 ■