金魚屋から『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の、小原眞紀子さんの連載小説『No.018 本格的な女たち』をアップしましたぁ。同窓会サスペンス小説です。上高地での現場検証の回ですね。現地を見て関係者と会話を重ねれば重ねるほど真実は曖昧になってゆくわけですが、ある瞬間に点と点が繋がるのがサスペンス小説の醍醐味です。
小原さんは小説では殺人に燃えるそうです(笑)。『文学とセクシュアリティ』で書いておられますが、「小説の登場人物に人権はない」。つまりヒドイとか可愛そうと思うのは読者の特権であって、創作者にとって登場人物はコマです。事件を起こすことによって何事かを明らかにしようとするのが創作者です。ただ事件には作家の好みといふか得意不得意があって、小原さんの場合は殺人が一番燃えて書きやすい事件要素だということです。
小原さんの『文学とセクシュアリティ』は『源氏物語』論であると同時に小説論でもあります。小説について理論的にお考えになっています。またその理論は『本格的な女たち』などの小説にもかなり的確に援用されています。なぜか。
ほとんどの小説家は10代の頃から小説を書きたいと思い試行錯誤を重ねています。形になってくるのは早くて20代中頃です。つまり10年近くは小説を読み耽り小説を試作しています。詩人も同じですね。最低でも10年は詩に夢中になっている時期がある。
そういう小説家、あるいは詩人としての骨格ができあがっている人が他ジャンルの作品を書くとどうなるのか。たいていは小説家あるいは詩人の肩書き(ステータス)で他ジャンルの作品を書き始めることになる。簡単に言えば見よう見まねで小説や詩を書く。しかしうまくいかない。試行錯誤の10年がないからです。詩人の書いた小説にろくなものがなく、小説家の書く詩にろくなものがない理由がここにあります。
この垣根を越えるためには他ジャンルの本質を考え抜く必要があります。詩や小説で行ったのと同じような試行錯誤を大人になった作家が理論的に行うわけです。小原さんの『文学とセクシュアリティ』はそういった書物であり、小説理論書です。小原さんの小説には詩人が書いた小説に見られるような稚拙さがありません。その理由は根本的に小説とは何かを考え、その本質をつかんでいるからです。
■ 小原眞紀子 連載小説『No.018 本格的な女たち』縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連載小説『No.018 本格的な女たち』横書版 ■
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