佐藤知恵子さんの文芸誌時評『大衆文芸誌』『オール讀物』の2連投です。『No.143 古内一絵「泥鰌」(オール讀物 2019年07月号)』、『No.144 恩田陸「昭和94年の横町」/松田幸緒「色物の芸人」(オール讀物 2019年08月号)』を取り上げておられます。
佐藤さんは『時代モノは現代的問題を先鋭に表現した一種のパラレルワールド小説でございます。史実に沿ってネタを探すより、情報収集&分析によって現代的問題を的確に把握する方が先ね。過去の風俗や人情を描くより、現代人が抱えている問題とその解消の方向性を探ることの方が遙かに難しいのよ』と書いておられますが、それは今の大衆小説が抱えている大きな課題でしょうね。
情報化時代ですから大衆小説、特に時代小説を書くのは一昔前より遙かに簡単になっています。まーはっきり言えば、うまく時代小説が書けないのは、〝時代小説はコンナモノ〟という割り切りが足りないからだと言っていいところがあります。もっと酷なことを言えば、人情チャンバラ武士の矜恃といったステレオタイプにきっちり沿えば、いくらでも大衆時代小説は量産できます。事実オール讀物さんの半分以上のページを時代小説が占めています。
でもステレオタイプな時代小説は飽きられ始めています。大衆小説としての娯楽として必要な何かが決定的に不足している気配なのです。それが何かと言えば、佐藤さんが指摘した〝パラレルワールド小説としての現代性〟でしょうね。時代小説は単に過去を描く小説ではありません。現代小説では夾雑物が多くて端的に表現できない現代的問題を、ズバリと焦点にしてその解決方法を示唆できなければ、時代小説は本当の魅力を発揮できないのです。
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評『大衆文芸誌』『オール讀物』『No.143 古内一絵「泥鰌」(オール讀物 2019年07月号)』 ■
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評『大衆文芸誌』『オール讀物』『No.144 恩田陸「昭和94年の横町」/松田幸緒「色物の芸人」(オール讀物 2019年08月号)』 ■
■ 金魚屋 BOOK Café ■
■ 金魚屋 BOOK SHOP ■
■ 第8回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第08回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 金魚屋の本 ■