寅間心閑(とらま しんかん)さんの連載小説『助平(すけべい)ども』『十八、ぬかるみ、明るみ』をアップしましたぁ。悪友で複雑な関係になりそうな安太が、絵画展で優秀賞を受賞したのですが、主人公の心に芽生えるのは当然のように嫉妬です。置いてきぼりを食らいそうになる焦りでもあります。小説ですから、そうこなくっちゃだわといふ展開です(爆)。
小原眞紀子さんが『文学とセクシュアリティ』で、『小説の登場人物に人権はない』と書いておられますが、まったくその通りです。読者ならこの小説好き、嫌い、この登場人物好き、嫌いでいいのですが、小説家は読者の反応を正確に予測しながら作品を作ってゆく必要があります。悩み苦しみドツボにはまるように登場人物を追いつめていっても、その効果を意識していなければならない。可愛そうでも気の毒でも、作家が作品で表現したい思想が残酷を必要としているなら登場人物を追いつめる。つまり『登場人物に人権はない』。
小説は基本現世の物語です。小説がまどろっこしくもある風景や風俗、登場人物を造形して、現実世界をなぞるように書く言語芸術であるのは言うまでもありません。現世の物語である以上、そこで表現されるのは現世の人間の感情や思想です。愛や友情、悲しみ、邪悪、嫉妬などは小説の大きなテーマになります。乱暴に言えば小説とは男と女と金の物語であり、中心になるのは恋人、夫婦、家族などの人間単位です。そのくらいミニマルに小説という言語芸術を捉えなければ、小説を強く縛る〝掟〟から逃れることはできません。
もちろん〝地上で起こることは天上でも起こる〟。神話などに描かれているように、地上の物語は地上で終わるのではなく、天上の審級にも持ち上げてゆくことができます。ただし現実世界の物語をカッチリ書けなければそれは不可能です。いきなり天上を目指せば、まず間違いなく出来の悪い純文学になります。
■ 寅間心閑 連載小説『助平(すけべい)ども』『十八、ぬかるみ、明るみ』縦書版 ■
■ 寅間心閑 連載小説『助平(すけべい)ども』『十八、ぬかるみ、明るみ』横書版 ■
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