谷輪洋一さんの文芸誌時評『文芸5誌』『No.128 文藝2019年春季号』をアップしましたぁ。どのメディアも時代に合わせて変化しようと必死に模索している気配は伝わってくるのですが、今ひとつ目に見えるような変化が起こらない。むしろ文芸誌は十年一日のごとし、といった感じもします。
これは嫌味ではなく、今の文学青年少女は、自分の作品がメディアの目にとまり、華々しくデビューすることは夢見ていても、実際には文芸誌をほとんど読んだことがないと思います。手に取って読み始めたとしても、強烈な違和感がまず襲ってくるでしょうね。これはいったいどういう世界なんだと驚き、臆し、自分には関係ないと雑誌を閉じてしまうのが普通の反応だと思います。
それは昔の文学青年少女もあまり変わらなかったわけですが、どんな形であれ、デビューしていわゆる文壇の一員となると、一瞬で作家の意識が変わります。betterに変わる場合もあるし、文壇ルールに染まってダメになる場合もある。また文芸誌で新人賞を受賞してデビューしようとしている作家の卵は、確実に文芸誌を読んでいます。そうしなければ現実問題、文芸誌の新人賞はまず受賞できません。
もちろんどういう選択をするのかは作家の自由ですが、最低限度他者の作品を真剣に読み込み、小説の書き方のルールや現代文学の状況を肌身で感じていなければ、作家デビューはムリだと思います。ウルトララッキーが降ってきても続かない。文壇にはかなり特殊なルールがあります。
谷輪さんは『文学的価値の不変を前提として、表層の変化がある。表層が変化して見えない理由は、文学的価値の不変にはない。むしろ文学的価値が揺らいでいるがゆえに、表層が思い切って変われないのだ』と批評しておられます。谷輪さんが書いておられる『文学的価値』がいわゆる文壇ルールです。それはもう賞味期限が切れかかっていますが、代替の新しい価値が見出せないのでgoes onになっています。当面従来通りの文学的価値に頼るしかないのですね。それは変えられると思いますが、何を変えたらいいかすらわかっていない作家にはムリなのも言うまでもありません。
■ 谷輪洋一さんの文芸誌時評『文芸5誌』『No.128 文藝2019年春季号』 ■
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