佐藤知恵子さんの文芸誌時評『大衆文芸誌』『オール讀物』の2連投です。『No.130 東山彰良「あとは飛ぶだけ」(オール讀物 2018年05月号)』、『No.131 梶よう子「朝顔同心 中根興三郎 菊花の仇討ち」(オール讀物 2018年06月号)』を取り上げておられます。石川も東山彰良さんの「あとは飛ぶだけ」は読みました。いい作品です。
んでこんなことを書くと怒られるかもしれませんが、大衆小説を書くのはそんなに難しくありません。これも乱暴な言い方ですが、難しい作品、高尚な作品を書こうとするから大衆小説が書けない。オール讀物や小説現代、小説新潮などを積み上げて1年分くらい通読し、売れてる順に片っ端から大衆小説を読んで、テーマや書き方をなぞるように小説を書けば、大衆文学は書けます。
ただしどの世界でもトップに立つのは難しい。大衆小説家とみなされている作家でも、トップレベルの作家は必ず純文学的要素を持っています。しかしある程度の世間知が身についていれば、底辺から中間くらいをウロウロする作家になるのはそんなに難しくない。ただ何事にも具体的なルールというものがあります。
大衆作家になりたいなら、なにがなんでも大衆小説誌の新人賞を受賞するのが近道です。んで基本的には当面滅私奉公で編集部の指示に従う。こういうタイプの作品を書けと言われたら書く。枚数もきっちり守る。一番大事なのは締切を守る。死守する。もっと大切に扱われたいなら前倒しに締切を設定する勢いで書いて、さらに頼まれていない原稿を持ち込む。これをやれば最初の関門はかなり高い確率で開きます。基本的に大衆小説作家は、月産300枚は軽く書ける力がなければ及第点に届きません。
しかしたいていの作家の卵さんたちにとっては、上記のルールはとっても高いハードルでしょうね。実際やれと言われるとまずできない。人間たいていそうですが、始める前は「んなもん楽勝」と楽観していますが、いざやってみるとできない。今生き残っている大衆作家さんたちはかなりの力があるわけです。
またクライアントの要望に合わせてテーマを変え、枚数も自在に調整して書ける作家はいずれどっかで芽を出して文学の世界の表舞台に現れます。ただ突然やり始めてもほとんどの場合はムリでしょうね。芽が出る年齢は遅くなっても、若いうちから書くことに慣れそれなりの枚数を書いてきた作家でないと難しい。文章にも芸の側面はあり、経験を積まなければ決してうまくならないのです。
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評 『大衆文芸誌』『No.130 東山彰良「あとは飛ぶだけ」(オール讀物 2018年05月号)』 ■
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評 『No.131 梶よう子「朝顔同心 中根興三郎 菊花の仇討ち」(オール讀物 2018年06月号)』 ■
■ 第6、7回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■