山本俊則さんの美術展時評『No.077 『ボストン美術館の至宝』展』をアップしましたぁ。山本さん、『前回東京都美術館で開かれた『ブリューゲル『バベルの塔』展』が、ブリューゲル展と銘打ちながら油絵はブリューゲル(父)一点のみだったので、ん~今回はどうかなぁとあまり期待しないで見に行った』とちょっとおかんむりです。ただ『内容は非常に良かった』ようです。『ボストン美術館の全容を日本の閲覧者に紹介したいというボストン側の熱意が感じられた』と書いておられます。
ボストン美術館はアメリカで最も古い美術館であり、かつ政府援助などに頼らない市民美術館として知られています。欧米で最高の日本美術コレクションを持つ美術館でもあります。それもそのはずで、モースやフェノロサ、ビゲローのコレクションはボストン所蔵です。また美校を追われた岡倉天心が一時期ボストン美術館で学芸員のような仕事をしていたことがあり、この日本美術界に幅広いネットワークを持った希代の目利きによってさらに素晴らしい日本美術がボストン所蔵になりました。
最近になって20世紀初頭のまだ世界的美術売買システムが確立されていない時期に流出した美術品の返還を求める動きが世界各地であります。もちろん明かな簒奪、強奪、窃盗で流出した作品なら返還が望ましい。ただそれ以外の場合は善意の第三者が介在するわけですからちょいと微妙です。またある国の人間は、国外で評価が高まらないと自国の美術の価値に目覚めないところがあります。流出美術は自国の文化的価値を高めた役割を担っていたわけで、長年、外国で大切に扱われてきたのも確かです。そのあたりを良識的に判断しないと返還運動を起こしても感情的にこじれるだけという面はあります。
基本、今なら犯罪となるような経緯で流出した美術品以外の灰色の流出美術品は、もし返還を求めるなら買い取るのが基本だと石川は思います。美術業界を知っている人は、優れた美術品を右から左に動かすのがいかに難しいかをよく知っています。よほどのことがなければ政府同士の話し合いまでには至らない。また政府同士の話し合いになる場合、必ずと言っていいほど現在の政治状況が反映されます。簡単に言えばナショナリズムの対立になりやすい。
お金で解決というのは殺伐とした印象を与えますが、美術でナショナリズムの対立を引き起こすよりいいと思います。以前ニューヨークでガンジー使用の眼鏡などがオークションにかけられました。インド政府が差し止めを要求しましたが、インドのビジネスマンが1億7千万くらいで落札した。んで落札者はそれをインド政府に寄贈しました。落札者は富豪なんでしょうがスマートなお金の使い方だと思います。美術は政治と無縁の方がよろし。
■ 山本俊則 美術展時評『No.077 『ボストン美術館の至宝』展』 ■
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