水野翼さんの文芸誌時評専門文芸誌『No.028 ミステリマガジン 2017年03月号』 をアップしましたぁ。『そしてクリスティーはいなくならない』という特集を取り上げておられます。現代風俗と比較するとクリスティー作品も古びてきています。松本清張とかが古びてきているのと同じです。でもエンタメ業界は相変わらず古典作品に目配りしています。リメイクドラマや映画が盛んに作られている。それはなぜなんでしょうね。
そもそも、クリスティーはひとつのジャンルである、とも言える。それはクリスティーという個によって規定されるから、ジャンルとしての発展や継承はない。それでも独立したジャンル性を有するのは、いまだ汲めども尽きぬ謎があるからだ。ミステリーにとっては最高のことだが。
クリスティーに内包される謎とはしかしもちろん、犯人は誰か、というものではない。(中略)かと言って、たとえばパトリシア・ハイスミスのような人間存在にかかる謎というものでもない。(中略)クリスティーの謎は(中略)少なくとも通常の意味で “ 文学的 ” なものではない。だがそれは本当に “ 文学 ” ではないのか。
(水野翼)
後はコンテンツを読んでいただきたいと思いますが、ミステリやSFといったジャンルが持っている文学性はとても重要なものです。それは文学の根源を指し示しながら、そこからズレてゆこうとする。その振幅の大きさがミステリやSFの魅力だとも言えます。
文学金魚では文芸誌時評を始めとして、現状の文学状況を多角的に検証しています。それが〝ほとんど徒労〟であることは、石川を始めとする執筆陣は重々承知しています。多くの作家とその卵たちは〝何かしてもらうこと〟しか考えていません。要するに自己顕示欲の塊であり、メディアはそれを達成するための踏み石でしかありません。
しかし現状の文学界がどれほど厳しい状況にあるのかは認識しておいた方が良い。文学金魚はその厳しさを著者にストレートに伝えますが、ほかのメディアは金魚ほど親切ではない。売れない作家は黙って切られるだけです。20代、30代でちょっと売れても50代くらいまでには行き詰まる作家がほとんどです。なぜか。考えないからです。
これほどマーケティングや戦略が口やかましく言われ、芸能人の行く末を始めとして、多くの人がそれをかしましく議論しているのに、文学者は相変わらず作家と呼ばれ特権的先生になることを夢見ているように思えます。でもそれは甘い。これからさらにそういった幻想は潰えてゆきます。本気であるジャンルで活動し、対価を得て生きてゆこうとするなら、情報を集め、それについて真剣に考えることは不可欠です。
■ 水野翼 文芸誌時評 専門文芸誌『No.028 ミステリマガジン 2017年03月号』 ■
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