鶴山裕司さんの連載エセー『続続・言葉と骨董』『第053回 フレンチ・デルフト、イングリッシュ・デルフト(後編)』をアップしましたぁ。鶴山さんはコンテンツ冒頭に、1789年にフランスで作られたお皿(フレンチ・デルフト)の写真を掲載しておられます。ん~、フランス革命真っ盛りで、バスティーユ牢獄が襲撃された年だなぁ。マリー・アントワネット王妃の人気は絶大で、今年10月には六本木ヒルズの森アーツギャラリーで、『マリー・アントワネット展』が開催されます。このお皿とアントワネット妃はぜんぜん関係なひですが、同じ空気を吸っていたのかと思ふと遠い目になってしまひますね(爆)。
ただイスラーム陶器を源流とし、オランダのデルフト窯で全盛を極め、その伝統を継承しながら磁器生産に進んでいった陶磁史は、ヨーロッパではあまり重視されていない。スペインの美術館にはイスラーム系陶器(イスパノ・モノレスク)がたくさん飾ってあるが、まるで先史時代の遺物の扱いである。スペイン美術はカルロス四世の宮廷画家、フランシスコ・デ・ゴヤの時代から始まる。
それはドイツ、フランス、イギリスなどでも同じである。王侯貴族が蒐集した中国・日本製の磁器は麗々しく展示されているが、次にヨーロッパ人が目を留めるのはウェッジウッド(イギリス)、マイセン(ドイツ)、セーヴル(フランス)、リヤドロ(スペイン)窯などで作られた、精緻なヨーロッパ人好みの磁器であることが多い。大量に作られた庶民用の中国・日本の模倣器の上を、たいていのヨーロッパ人の視線は熱もなく過ぎてゆく。良い悪いの問題ではなくて、これは面白いことだと思う。
(鶴山裕司『フレンチ・デルフト、イングリッシュ・デルフト(後編)』)
とはいえ鶴山さんの骨董論は文化論です。骨董エセーでは書き手が所有している〝物〟を見せなければならなひといふ暗黙のルールがありますが、それを踏まえた上で、それがどーしたといった文化論を展開しておられます。物に淫しないところが鶴山さんの骨董エセーの特徴です。物を手がかりにして、物と対話して文章を書くといふ筋が、きっちりと通っているエセーでありますぅ。
■ 鶴山裕司 連載エセー『続続・言葉と骨董』『第053回 フレンチ・デルフト、イングリッシュ・デルフト(後編)』 ■
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