山田隆道さんの連載小説『家を看取る日』(第11回)をアップしましたぁ。小説は基本的に現世的な人間の喜怒哀楽を描く芸術であり、多くの作品で主題になるのは論理ではどうしても解消しきれない現世的苦悩です。いや、それだけじゃない、現代詩のような言語実験もできると考えている作家もいらっしゃることは重々承知しています。しかしすべての表現は原理を抑えた方がより自由になれると思います。
小説が現世的苦悩を主題とすると措定すれば、中心になるのは男と女、カネ、家族関係が多くなるのは当然です。石川は小説ではこの三つをはっきり主題に据えた方が良いと思います。ただそれは、小説の三大主題を無条件に受け入れるということを必ずしも意味しません。なぜ物語などというまだるっこしい手法を使って小説を書くのかを考え抜けば、これらの主題が自ずから浮かび上がって来るはずです。それを腑に落ちるまで考え抜けば、小説芸術とは何かが見えてくるのではないかと思います。
多かれ少なかれ家族関係は特殊です。その特殊さを突き詰めてゆくことで、ある普遍に達するのが家族モノの小説の醍醐味だと思います。主人公の新一にとって、横暴で理不尽でもある父親は、どうやら社会そのものとしても立ち現れているようです。また子供を持つ新一は、自らも社会そのものとして子供たちの前に立たざるを得ない。家族モノ小説はスリリングでありますぅ。
■ 山田隆道 連載小説 『家を看取る日』(第11回) pdf版 ■
■ 山田隆道 連載小説 『家を看取る日』(第11回) テキスト版 ■