日本が誇る世界的特殊作家、三浦俊彦さんの連載小説『偏態パズル』(第58回)をアップしましたぁ。印南哲治さん主催おろちパフォーマンス第3弾です。タナカ君とキミコさんの純愛的おろち譚なわけですが、どーやらタナカ君の努力は稔らなかったやうですねぇ。「遠くだったから確かじゃないが東急ハンズでふたりがいっしょに買い物しているのを見た、って奴がいるらしいから。まあいろいろつまずいた挙句ハッピーエンドだったんだ。と思っていたらそれは見間違いで二人とも別人だったとか後から聞こえてきて。そうか、でも一方だけが別人だったという見間違いに比べればまだ望みありだな、とそういう消極的ハッピーエンドで満足することにしよう」とあります。三浦センセらしひ記述だなぁ(爆)。
前にもちょいと書いたことがありますが、三浦センセのエクリチュールって鷗外史伝みたひなところがあります。鷗外は確か『北条霞亭』かなんかで、頼山陽がメガネをかけて亡くなったのか、そうぢゃなかったのかを、10ページくらいに渡って考証しております。結果として史実といふものがいかに主観に基づいたいい加減なものかを証明しているわけです。三浦センセのおろち学についても同じやうなことが言えるなぁ。
今回のおろちパフォーマンスではタナカ君が気の毒なことになってしまふわけですが、それについて「※補注a」では「良心の欠如というより認識能力の不足ゆえの当該状況というべき印南的悲惨を考慮に入れても、おろち史上の良心系痛恨事の五指に入る微妙因業と言えよう」と補記されています。『偏態パズル』ではある現象が様々な形で解釈され直します。テーマは一貫しているのですが、記述自体はその相対化だとも言えます。そのあたりが今までの偏態系の小説作品と『偏態パズル』が決定的に違うところです。それにしても「良心系痛恨事の五指に入る微妙因業」って、すんげぇ解釈の幅がありそうな漢文的文章だなぁ(爆)。
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■ 三浦俊彦 連載小説 『偏態パズル』(第58回) テキスト版 ■