鶴山裕司さんの『BOOKレビュー・詩書』『No.014 俳句の霊魂とはなにか-安井浩司句集『宇宙開』(前篇)』をアップしましたぁ。安井浩司さんの最新句集(第16句集)『宇宙開』の書評であり、鶴山さんによる新たな安井浩司論です。安井さんは金魚屋掲載の最新インタビューで、『この句集については・・・ものの見事になんの反応もないんです。いつもですと、かなりいろんな人が意見を言ってくれたり、あるいは雑誌なんかに書評が載ったりするんです。でも今回は雑誌にも書評が出ない。手紙もちょうだいするんですが、『宇宙開』については何も書いてないんです』とぼやいておられましたが、最初の本格的『宇宙開』論です。
ただまあ鶴山さんにも『宇宙開』論は書きにくかったらしひ(爆)。脱稿までにかなり時間がかかりましたね。鶴山さんは安井さんが『山毛欅林と創造』「後記」でお書きになった「〈霊〉的高揚」について、『原理的に言えば世界=言語生成システム自体を相対化する試みである。世界創造は、言語による世界内存在の命名・固定化のアナロジーとして捉えることができる。・・・創世以前に世界は存在しない。つまり「空」である。・・・まだ名付けられていない存在源基が蠢くエネルギー総体である。・・自然言語(記号総体)の上位(下位基層と言ってもいい)に静謐な世界があるとすれば、それは空の世界である。この空は〝ある意識〟によって現実=言語世界として現象する。・・・原理としては意識の発生によって空から有が創出されるのであり、そこで最初に生み出された世界=言語は絶対の影を帯びることになるのである』と批評しておられます。高度に哲学的な内容ですが、論旨は明快なのでお読みになればどなたでも理解できると思います。
不肖・石川も安井文学には強い関心があります。鶴山さんの読解は正しいと思いますが、簡単に言うと、安井俳句の方法は、通常の俳句作家のそれと大きく異なります。それが難解な印象を与えている。じゃあ徒手空拳で新し味を求める前衛かといえば、そんなことはない。安井文学は俳句の原理に根ざした新しい作品でもあります。鶴山さんの『宇宙開』論後篇は明日掲載します。
■ 鶴山裕司 『BOOKレビュー・詩書』『No.014 俳句の霊魂とはなにか-安井浩司句集『宇宙開』(前篇)』 ■