山際恭子さんのTVドラマ批評『No.056 シャーロックホームズ(人形劇)』をアップしましたぁ。NHKさんで不定期で放送されている『シャーロックホームズ』の人形劇です。脚本は三谷幸喜さん、人形(パペットデザイン・人形美術監修)は井上文太さんです。井上さんは画家・金子國義さんのお弟子さんです。井上さんの人形は、どことなく金子さんの絵の世界に似ていますよね。設定はいわゆるヤング・シャーロック形式で、ロンドンの寄宿舎で同室になったホームズとワトソンが学校で起こる出来事を解決してゆくのであります。
山際さんは三谷版ホームズ人形劇について、『人形劇の独特の魅力は、人形の背後の空間が持つ永遠性ではないか。空虚で心細く、それによって支えられる人形の存在が際立つ。人形たちは俗世のものではなく、いわばあらかじめ古びているので、いつ観ても古くない。この永遠の世界像は確かに、子供が世界に対して持つイメージに合致している』と書いておられます。まさにその通りですね。今回の作品は人形劇でなければできない内容だと思います。
また山際さんは、『三谷幸喜は・・・推理物のリメイクに傑作が多い。そのリメイクは殺人という事件性から、不条理劇へとスリップし、その結果コメディと化してゆく。・・・さらに三谷幸喜言うところの「シャーロックホームズはミステリーではなくアドベンチャー」として捉えようとするならば、今回はそれを強調するものとしての15歳の躍動感であり、相対的に内面を描きづらくさせる人形劇である・・・その不条理を現実に軟着陸させ、積極的な意味付けを与えるものが、若さや幼さ、学校という縛りだろう』と批評しておられます。
不肖・石川、ほぼ同世代といふこともあって三谷作品をかなり見ております。まあどの作家でもそうなんですが、三谷さんはけっこう作品の出来不出来が激しい。山際さんが書いておられるようにリメイクに傑作が多いわけですが、それは三谷さんがパターン化の能力に優れた作家だからでもあります。しっかし三谷さん、自分で作り上げたパターンを、しゃかりきになって壊そうとするところがあるんだな。それが時に迷走に見えたりしたわけですが、最近になって作品の質がすごく安定して来たやうに思います。三谷さんが大物脚本家になったので、書きたくない続編を書かなくても済むようになったといふ、単純な理由かもしれませんが(爆)。
■ 山際恭子 TVドラマ批評『No.056 シャーロックホームズ(人形劇)』 ■