ラモーナ・ツァラヌさんの『青い目で観る日本伝統芸能』『No.006 能〈恋重荷〉の元来の面白さを求めて』をアップしましたぁ。『恋重荷(こいのおもに)』は世阿弥作のお能です。不肖・石川はもちろん知りませんでしたが、現在では観世流でしか上演されない曲だそうです。世阿弥の時代にはよく演じられていましたが、その後長く上演が中断してしまい、数十年後に再び観世流の能楽師によって上演されました。ただどうも中断前と中断後では、その演出内容が変わってしまったようです。
ラモーナさんが取り上げておられるのは銕仙会の観世銕之亟さんをシテとする公演ですが、早稲田大学教授の竹本幹夫さんの協力を得て、世阿弥の意図にできるだけ近い演出が為されました。『No.003 禅鳳の演出による〈碇潜〉の魅力』と同様ですね。『恋重荷』では、白川院の女御に庭師の老人が恋をする。人々は身分違いの恋を諦めさせようと、錦で包んだ大岩を動かせたら女御に会わせてやろうと言う。大岩が〝恋重荷〟と呼ばれるわけです。そんな岩を動かせるはずもなく、老人は絶望して自殺してしまう。そして亡霊(悪鬼)となって女御の前に現れ、女御を責める。問題になった演出箇所は、老人が女御を責めるシーンです。
詳しくはラモーナさんのコンテンツをお読みいただければと思いますが、今回の公演では、ああなるほどと思われる演出が選択されています。ラモーナさんによれば、世阿弥著の『申楽談儀』にある、『色ある桜に柳の乱れたるやうにすべし』といふ言葉がキーワードのようです。すごい言葉ですねぇ。極めて視覚的なのですが、そこからいくらでも観念を引き出せる言葉です。ラモーナさんの劇評をお読みいただければ、お能がいかに洗練された芸術なのかがおわかりになると思います。
なお金魚屋の〝Interview of gold fishes〟では、4、5月に銕仙会の観世銕之亟さんへのインタビューを掲載します。インタビュアーはラモーナさんです。こちらも楽しみにしていてください。
■ ラモーナ・ツァラヌ 『青い目で観る日本伝統芸能』『No.006 能〈恋重荷〉の元来の面白さを求めて』 ■