星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第07回)をアップしましたぁ。紫式部『源氏物語』第二帖「箒木」の、末松謙澄さん英訳の星隆弘さんによる日本語戻し訳です。「雨夜の品定め」の続きです。末松さんは明治17年にケンブリッジで法学士号を取得していて『源氏物語』以外にも英詩の翻訳もあるそうです。どんな英詩を訳したのか知りたいところですね。
有名どころでは森鷗外が明治17年にドイツ留学しています。出発前に明治天皇に拝謁して訓示を受けています。夏目漱石は明治33年にイギリス留学しましたが、この時は紙の辞令一枚でした。16年間で海外留学の重要性も変わっていたのですねぇ。国費による海外留学はエリート中のエリートとはいえ、明治30年代には国を背負って立つという感じではなくなっていた。ま、明治10年代の日本に〝閑文字〟の文学者を国費で留学させる余裕はなかったわけですが。
今回の「雨夜の品定め」には源氏と頭中将の貴人に、左馬頭と藤式部丞という下位の貴族が加わります。左馬頭、従五位ですね。岡井隆さんに「歌はただ此の世の外の五位の声端的(たんてき)にいま結語を言へば」の歌があります。従五位の貴族、物の数ではないということです。ただ光源氏は貴族とはいえ庶民に近い左馬頭や藤式部丞から女性に関する意見(情報)を聞いて考え込んでいるわけです。
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第07回)縦書版■
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第07回)横書版■
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