小原眞紀子連載小説『幕間は波のごとく』第31回をアップしましたぁ。サスペンス小説には文法があります。まず冒頭で殺人が起こる。半ばで二度目の殺人が起きます。そしてラスト近くで三度目の殺人です。ほとんどのサスペンス小説がこの文法を踏まえて書かれています。ウソだと思うなら統計を取ってみるといいです。7、80パーセントのサスペンス小説が文法通りに書かれているはずです。
こういう文法が成立するのは、サスペンス小説が300枚以上の長編小説だからでもあります。300枚以上という枚数は長い。小説を泡立たせるのは登場人物の心理だけではありません。事件が起こり、人が移動することもとても重要です。簡単に言えば心理描写だけの長編小説はもたない。退屈です。サスペンス小説は読者を楽しませるために書かれてもいるわけですから、事件が起こらなければテンション(緊張)を維持できない。殺人という取り返しのつかない事件はセックス描写と同様に読者の注意を強く惹きつけるのです。
小原さんの『幕間』は見事にサスペンス小説の文法を破っています。掟破りサスペンス小説です。それでもテンション(緊張感)が落ちない。ファミリーモノだからかもしれませんね。純文学的心理描写や人間の関係性描写が多いですが、それが切実に感じられる。これは面白いサスペンス小説です。
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