萩野篤人 連載評論『アブラハムの末裔』(第02回)をアップしましたぁ。第14回金魚屋新人賞受賞の連載評論です。第 1 回冒頭に「二〇一六年七月二六日未明のことである。神奈川県相模原市にある知的障害者のための福祉施設「津久井やまゆり園」で、入所者十九名が殺害され、職員を含む二十六名が重軽傷を負う事件が起きた。(中略)その朝、いつものように社宅で出勤の支度をしながらテレビのニュース番組を観ていた私は、画面に釘付けとなり、茫然自失となってその場に立ち尽くした」とあるように津久井やまゆり園事件に端を発した評論です。
著者の実人生に深く関わりのある事件だから大きなショックを受けただけではありません。この事件は人間存在の本質を衝いています。第 2 回冒頭には「「ヒトラーの思想が降りてきた。」植松という男はそう語ったらしい。その発言を聞いて眉をひそめるひと、いわゆる「優性思想」を前時代の迷妄と一蹴するひとに、その背後にはあなたのようなひとが蓋を閉じて久しい「本音」を白日の下にさらけ出し、世の中の価値を転倒しようと目したニーチェの思想がひかえているのだ、と言ったらおどろくだろうか」とある。
表題『アブラハムの末裔』とあるように、萩野さんの思想は旧約聖書のアブラハムによる息子殺害未遂、つまり神の不条理と救済にまで進んでゆきます。人間存在の不条理と救済と言ってもいいかもしれません。これは社会批判評論ではなく人間存在に根ざした文学・哲学思想です。
■萩野篤人 連載評論『アブラハムの末裔』(第02回)縦書版■
■萩野篤人 連載評論『アブラハムの末裔』(第02回)横書版■
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