岡野隆さんの『句誌時評』「月刊俳句界」2021年07、08月号、「角川俳句」2021年08月号をアップしましたぁ。岡野さんは「文学だけでなく人間世界全般に言えることだが、論理的二項対立ですべて割り切れるはずもない。世界の実態はおおむね灰色だと言っていい。つまりどっちつかずというのが世界の常態である。しかしそれでは人間の思考は先に進まないわけで、ある意味極端なまでに先鋭化させた極を、それも対立する両極を措定した方がいいことが多い」と書いておられます。
簡単に言うと、単純な二項対立から始めた方が刺激的思考は生まれやすいということです。もちたいていの事柄はそう簡単に二項対立では割り切れない灰色なわけですが、最初から灰色という認識では思考は先に進まないといふことです。
文学の世界では、政治経済のように毎日毎月毎年変わるようなハッキリとした〝状況論〟は立てにくい。これは当たり前のことで、文学は各時代の政治経済状況を反映し、その〝遅れ〟の中である時代の本質を表現してゆくものだからです。
文学ジャーナリズムはすべからく現代社会と文学の変化を捉えるためにあるわけですが、針小棒大に小さな変化を大変化として取り扱っていると、大局が見えなくなるところがあります。現状の小さな変化を感受しながら、それを常に大局から眺めるようにすれば、いわゆる〝状況論〟に振り回されて一生を終えるという徒労は避けられるでしょうね。
■ 岡野隆『句誌時評』立村霜衣「兜太の魅力 諷詠と映像」(「月刊俳句界」2021年07月号) ■
■ 岡野隆『句誌時評』藤原暢子「おやつ」(「月刊俳句界」2021年08月号) ■
■ 岡野隆『句誌時評』川名大「「十七音詩」の新風」(「角川俳句」2021年08月号) ■
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