寅間心閑連載小説『オトコは遅々として』(第07回)をアップしましたぁ。寅間さんの連載小説です。妊娠小説であり、中絶是非がテーマの小説でもあります。なかなか難しい問題ですね。今アメリカで大もめしております。
漱石さんは文学は倫理的でなければならないと書きましたが、これが一筋縄ではいかない。人間は強いエゴを持っているからです。生存競争裡に生きるのは動物と似ていますが、それにエゴが付加される。つまり自己中心的思考とそれに基づく行動。これが数々の反倫理的原動を生んでゆく。生命の尊厳もその大きな課題の一つですね。
じゃそれを文学でどう描くのか。最初から倫理に沿うというのは一つのまっとうな道筋です。その逆に徹底して反倫理を描く方法もある。極端なことを言えば、犯罪を犯した者がその心理を包み隠さずすべて吐露したような小説は、反倫理的でありながらある真理を描いていることになる。フィクションであるにせよ、人間心理のある真理を描けば、それは反面教師的に倫理を強く喚起することになります。
文学で倫理的問題を扱う方法は幾つもあります。もちろんまっとうに倫理を大上段に掲げたのでは小説として物足りない。反倫理に大きく傾きながら、小説ならではの矛盾と混乱の中から倫理が浮かび上がらなければ優れた小説にはならないわけです。
■ 寅間心閑新連載小説『オトコは遅々として』(第07回)縦書版 ■
■ 寅間心閑新連載小説『オトコは遅々として』(第07回)横書版 ■
■ 金魚屋 BOOK Café ■
■ 金魚屋 BOOK SHOP ■