金魚屋から『夏目漱石論―現代文学の創出(日本近代文学の言語像Ⅱ)』を好評発売中の、鶴山裕司さんの『美術展時評』『No.102 奥の細道330年 芭蕉展』をアップしましたぁ。今さらですが、鶴山さんの美術展時評は連載100回を超えました。100本も書いていると文章が自ずとこなれてきますね。
文学は〝学〟であり〝芸〟でもあります。勘所を抑えていればいい作品は書けます。ただし芸の側面は数をこなさないと文章はやはり上手くなりません。鶴山さんの美術批評を読んでいても、100本、恐らく1500枚くらい書けば、芸の側面が自ずと上がってゆくのがよくわかります。石川がとにかく数と枚数を書かなきゃダメと言っているのはそういうことです。
芭蕉の書は明らかに平安時代の流麗な仮名書きの書に倣っている。また旅に明け暮れた人には似つかわしくない、神経質なほど美しく端正な字を書こうとしている。倣うレベルに留まっていて作家の個性が感受できないという意味で、それが芭蕉を能書から遠ざけたと言えないことはないが、芭蕉がその文学(俳句と散文)だけでなく書に至るまで平安王朝文学の雅の意識を貫徹させていたのは確かだろう。芭蕉が理想としたのは西行、定家らの王朝歌人、それに白楽天などだが、彼らに憧れるのではなく、自らの文学を彼らの域まで高めたいという強い意志があったようだ。
鶴山裕司
出光美術館での芭蕉展は、今週末の9月29日まで開催されています。ご興味のある方は是非。
■ 鶴山裕司『美術展時評』『No.102 奥の細道330年 芭蕉展』 ■
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