ドイナ・チェルニカ著、ラモーナ・ツァラヌ訳、No.006 『少女と銀狐』第7章をアップしました。『第7章 ヘビが銀狐に大事なことを伝える』です。訳者のラモーナさんは『前書きの代わりに』で『この物語には、ルーマニア人の世界観、特に自然観が鮮やかに映し出されていること、そしてルーマニアの言葉の特徴やルーマニア文化の根本的な要素がたくさん詰まっていることに気づきました』と書いておられますが、それがなんとなくわかって来たような気がします。
この物語、かなり汎神論的ですね。もちろんキリスト教文化圏の物語ですから、大きな外枠フレームはキリスト教的な一神教的概念で構築されているのは間違いないでしょうが、毎回のように登場してくる動植物たちには、ちょっと得体の知れないところがある。善と悪の中間、意識と無意識の中間にいるような存在がけっこう多いです。基本子供向けの物語ですが、意外に複雑で錯綜していると思います。
石川がルーマニアと言ってすぐに思いつくのはエリアーデで、『ホーニヒベルガー博士の秘密』などけっこうお気に入りなんですが、変わったオジサンだなぁという印象もあります(爆)。エリアーデ単体だとすぐ神秘主義者と言いたくなるんですが、『少女と銀狐』を読んでいると、彼は聖と俗という現世的区分の深層に蠢く、ある本質に興味があったのかな、と思えてきます。
いずれにせよ現代は理知主義が行き着くところまで行き着いたという感じがする時代です。宗教・民族対立が激化しているのは、ある意味臨界点にまで達した理知主義への反動かもしれません。ただそこからわけのわからない神秘主義に傾くのは反動よりも危険なことです。恐らく聖と俗という区分の深層に蠢く何かには汎用性がある。そういった汎用的精神を探り当てることができれば、それが新たな現代的知となる可能性があります。
■ ドイナ・チェルニカ著 ラモーナ・ツァラヌ訳 No.006 『少女と銀狐』第7章 縦書版 ■
■ ドイナ・チェルニカ著 ラモーナ・ツァラヌ訳 No.006 『少女と銀狐』第7章 横書版 ■
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