萩野篤人 文芸誌批評 No.006 安堂ホセ「DTOPIA」(文藝二〇二四年秋季号)、連載小説『春の墓標』(第11回)、連載評論『人生の梯子』(第08回)をアップしましたぁ。『人生の梯子』は最終回です。萩野さん自身が『アブラハムの末裔』『死んだらそれきり』『人生の梯子』は3部作で、渾身の評論だと書いておられますが、その通りだと思います。
ちょっとナイーブなことをあえて書きますが、萩野さんの中にはすでにお亡くなりになった障碍を持った妹さんがずっと生きています。言うまでもないことですが、妹さんの障碍にも死にも萩野さんは一切責任がない。しかし萩野さんは、これも微妙な言い方ですが、天啓のような理不尽をつぶさに見てきた。あえて天恵と言ってもいい。それは体験した人にしかわからない。しかしこの理不尽は人類共通のものだという肉体思想が萩野さんにはある。それを萩野さんは妹さんから教えてもらった。
虚無をどう乗り越えるのか。それは解決不能な絶対的アポリアです。人間は絶対にそれを解消できません。しかしこのアポリアに向かい合うためには、まず虚無をのぞき込まなければならない。多くの人はそれをやらない。無意識に避ける。しかし萩野さんは真正面から虚無を見つめます。虚無は絶望そののもです。それでもなお、萩野さんは救済のようなものを探ります。救済のようなものであって救済そのものではない。この作家は書くことでしか生きられないでしょうね。書くことでほんの少しだけ救済されるかもしれませんが。
■萩野篤人 文芸誌批評 No.006 安堂ホセ「DTOPIA」(文藝二〇二四年秋季号)■
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