星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第04回)をアップしましたぁ。第一帖「桐壺」は大事ですね。光は幼少の頃から美男子で頭もよかった。でも異母兄がいて皇位継承権を与えるとお家騒動になってしまう。だから源の姓を与えられて臣下に下ることになった。平氏も源氏も始祖は皇統に連なるわけです。
この絶妙なポジションが作者・紫式部が光源氏に与えた最大の自由です。光源氏は貴公子でありながら皇位継承という政治的な争いから除外されます(それでも「須磨」「明石」で政争に巻き込まれますが)。政治家としても優秀だったはずですがそれは当たり前なのであまり触れられず、紫式部が一番描きたかった女性たちとの関係がメインになっていきます。
皇統に連なる現実の貴公子には源融や在原業平がいます。紫式部より100年くらい前の人ですが『伊勢物語』で名高かった。融は左大臣という高位に登りますが藤原氏が実権を握っていてお飾りでした。業平の東下りは有名ですね。失意の人だった。しかし紫式部はフィクションの中で光源氏を無傷の自由な貴公子に仕立てた。
星さんの翻訳は相変わらず見事ですね。英日だけでなく日英でもオリジナルテキストのコンテキストをよく理解した翻訳ができそうです。
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第04回)縦書版■
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第04回)横書版■
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