星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第03回)をアップしましたぁ。第一帖『桐壺』の末松謙澄英によるダイジェスト英訳の日本語戻し訳です。
桐壺更衣はそれほど位が高くなかったのですが桐壺帝に寵愛されました。『源氏物語』が「いづれの御時にか、女御・更衣あまたさぶらひ給ひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり」で始まっているのはよく知られていますね。
桐壺更衣は光源氏を生んですぐに亡くなってしまうのですが、これが波乱の幕開けです。光は皇子ですから皇位継承権があります。しかも帝の寵姫の息子です。ただ桐壺更衣は「いとやむごとなき際にはあらぬ」ので、皆が桐壺帝が第一子を押しのけて光を皇太子にしてお家騒動になるのではないかと心配するわけです。
これについては今回翻訳されている通り「かくして帝は本音を秘して、おくびにも出しませんでした。帝の示した慎みによって事は円く収まり、第一皇子の母君も胸を撫で下ろしたのでした」という形で落着します。光は臣下になり源氏を名乗ることになります。それにより貴公子でありながら自由を得たわけです。また母親の面影を知らない男の子です。『源氏物語』の幕開けですね。
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第03回)縦書版■
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第03回)横書版■
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