星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第02回)をアップしましたぁ。末松謙澄英訳の『源氏物語』「第一帖 桐壺」の日本語戻し訳です。桐壺帝の寵姫・桐壺更衣は皇子を生んでしばらくして亡くなってしまいます。この皇子が光源氏です。
光源氏は天皇の子で男系ですから皇位継承権があります。しかし皇子はたくさんいたので皇太子として擁立されることはなく、臣下になります。天皇家の人々は臣民に名を与える立場なので姓がありませんが、臣下になると姓が必要になります。光に与えられたのは源氏姓です。平氏姓も元はといえば皇子に与えられた姓。『伊勢物語』の主人公に擬されている在原業平も皇子ですね。こちらは実在の人物ですけど。
日本語で読むと末松謙澄英訳が何をチョイスして訳しているのかよくわかります。『源氏物語』は主人公は男性ですが本質的には女の物語。常に作者が女性だったことを忘れてはなりません。天皇家のシステムや当時の結婚制度などは動かすことができない当時の社会的フレーム。その厳しく息苦しい社会システムの中に置かれた女性たちを貴公子・光を中心に描き出した物語です。
当時は男が女性たちのいわば生殺与奪の権を握っていましたが、男社会と違ってその世界は水のように流動的です。男が生まれながらの身分に生涯囚われるのに対して、女性は簡単に天まで昇ることができました。桐壺更衣がまず最初にそういう女性として現れます。
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第02回)縦書版■
■星隆弘 連載評論『翻訳の中間溝――末松謙澄英訳『源氏物語』戻し訳』(第02回)横書版■
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