松原和音 連載小説『学生だった』第16回 最終回をアップしましたぁ。いよいよ最終回です。前に通読していて今回も毎回読み直しましたがよい出来の小説です。
いわゆる私小説という部類に入ると思います。私小説は自分の体験などを元にして書く小説のことです。ただ私小説は量産しにくい。葛西善蔵や嘉村磯多らを思い浮かべればおわかりかと思います。みんなうんうん唸って作品を書きました。しかも中短編が多くなる。私小説作家は苦しいものです。
しかし先頃お亡くなりになった西村賢太さんは私小説を量産しました。長編ではなく中短編です。中短編で私小説を量産するのは尋常ではない。小説は一篇一篇内容が違います。効率的に書くなら最低でも150枚以上の作品の方がいいわけですが、2、30枚の私小説を量産した。なぜそんなことができたのかと言えば、私小説の構造を体得していたからです。西村さん、私小説に関しては超インテリでした。
私小説ではないにせよ、作家は多かれ少なかれ実体験を元に小説を書くことが多い。でも本格的私小説と同様にネタはすぐ尽きる。もち勝負はそこから。わたくしの体験を抽象ベレルに上げて、ということはテーマをハッキリつかんでそれをフィクション化すると小説を安定的に書けるようになる。逆に言えばテーマが明確ではない小説を茫漠と書きはじめても、途中で詰まることが多い。『学生だった』のテーマは明確です。
■松原和音 連載小説『学生だった』第16回 最終回 縦書版■
■松原和音 連載小説『学生だった』第16回 最終回 横書版■
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