萩野篤人連載評論『アブラハムの末裔』(第07回最終回)をアップしましたぁ。わたしたち現代人は〝言語的普遍者〟の世界に生きています。可能な限り厳密な用語定義と論理的な思考方法に基づく世界です。この言語的普遍者世界は現代社会の隅々にまで浸透しています。友達との喧嘩や週刊誌、新聞、文芸評論に至るまで、言語的普遍者として発言・発信しなければ誰も納得してくれない。読んでくれない。それを使わなければ薄ら笑いを浮かべて「それじゃあ誰も説得できないよ」と言われてしまう。
しかしどんなに論理破綻していようと、「でも違う」「それは違う」「いや違うんです!」と執拗に言い募る者がいる。たいていは取るに足りない反論・反語ですが、そうでない場合がある。論理破綻していてもその言葉に強い説得力がある場合がある。それをわたしたちは肉体的思想と呼びます。それはある程度まで論理化できます。が、完全に論理化されることがない。論理化できない。むしろ世界そのものである言語的普遍者世界の限界を露わにしてしまう思考です。
萩野さんの『アブラハムの末裔』は肉体的言語の評論です。可能な限り論理的に書かれていますが書き尽くすことができない。永遠のアポリアを巡る評論です。ただこのアポリアは肉体に刻まれた傷のように決して消えることがない。傷をなぞるたびに言語的普遍者の言葉が湧き出てやがてまた癒えることのない傷に戻ってゆく。つまり文学です。そしてこの文学の方法は多様です。萩野さんが文学者である限り、アポリアとしての傷からこれからも言語表現が溢れ出てくることと思います。
■萩野篤人連載評論『アブラハムの末裔』(第07回最終回)縦書版■
■萩野篤人連載評論『アブラハムの末裔』(第07回最終回)横書版■
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