松原和音 連載小説『学生だった』第08回をアップしましたぁ。クリスマスデート篇です。微妙な感じのカップルを描いているのですが、とっても魅力がありますね。簡単に言えば書くことがある。謎がある。でも相対化されているということです。
小説は基本現実の抽象化です。でも抽象化し過ぎると小説にならない。言葉数が減ってしまう。いわゆる詩になってしまうんですね。じゃどういう時に現実が抽象化され、かつ言葉数が増えるのかというと絶対的他者が存在している時です。自己は他者ではない。逆もまた真。これは単純ですが小説の基本セオリーになります。
これも単純化して言えばのどかな私の世界に絶対他者が入ってくる。了解可能部分はありますが絶対了解不可能が本質の他者です。この他者に私が揺さぶられ変えられ何らかの認識を得るのが小説の道行きということになります。小説は心理、つまり私のモノローグと捉えられがちですがそれがスリリングになるためには絶対他者が必要です。
ほんでこういった絶対他者、そう簡単に現れてくれません。私が心底興味を持つ他者でなければ私の内面が揺さぶられることはないわけですから。こっからがホントの意味でのフィクションです。絶対他者を創造するんですね。全部経験するわけにはいきませんから。『学生だった』には切実な絶対他者がたくさん登場します。そのたびに主人公の心が揺さぶられ言葉が増える。大きな事件は起こらないのにスリリングな小説になっています。
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