小原眞紀子連載小説 『幕間は波のごとく』第22回をアップしましたぁ。主人公の楡木子が真綿で首を締められるように追い詰められています。その原因というか背景がよくわからない。宙吊り(サスペンス)のままです。通常の犯人探しプロットとはちょっと違う。ま、小原さんのサスペンス小説に単純な犯人探し小説はないんですけどね。ただ今までの小原サスペンスとも違う展開です。
作家の作家性とは作品に筋が通っていることです。小原さんは『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』の著者ですが、この評論集は『源氏物語』だけでなく、女性的エクリチュール(小説)の本質に迫った名著です。女性作家あるいは作家を目指す女性なら「ああなるほど、小説はこういうふうに成り立っていて、こう書けばいいのか」というヒントまで得られる評論集になっています。もちろん男性作家にも有効ですが、それに気づく男性作家は少ないでしょうね。でも小説は絶対的に女性的な要素を含んでいないと成功しない。たとえば村上春樹さん、石川が見るところ、彼はかなり女性的作家です。世界の半分を見落としていて優れた小説を書けるわけがない。
ある意味エクリチュール・フェミニン(社会闘争的フェミニズムとは無縁です)の大家である小原さんが小説ジャンルとして選んだのがサスペンス小説です。金魚屋から第一弾として『香獣』が刊行されましたが、この小説は〝源氏香〟、つまり『源氏物語』に繋がります。作家の思想に一貫性があるんですね。そして小原さん、サスペンス小説でどーも犯人を見つけてそれを罰したりすることにあまり興味がない(笑)。そこのところは東野圭吾さんと似ていたりします。
■ 小原眞紀子 連載小説『幕間は波のごとく』第22回 縦書版■
■ 小原眞紀子 連載小説『幕間は波のごとく』第22回 横書版■
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