『2022年11月30日、金魚屋プレスの本、9冊同時刊行!』をアップしましたぁ。当初は10月末には刊行している予定でしたが、諸般の事情で11月30日に金魚屋の本全9冊を一挙刊行することになりました。所帯が小さいのでまー大変でした。しかし何事も慣れです。次回同じくらいの冊数の本を刊行することになっても、今回ほどは石川は疲れ果てることはないと思われます(笑)。
文学金魚の創刊理念は官庁縦割りのようになっている日本文学のジャンルの壁を突き崩し、文学を綜合的に捉えるという新しい文学認識を文学界に定着させることにあります。これはよくメディアでお目にかかるジャンルの越境とはまったく違います。むしろ文学金魚はジャンルは越境できないと考えています。人間が広大で多面的な世界を多方向から認識把握して表現するためにジャンルは自然発生的に生まれているからです。文学金魚が理念として提示するのは文学を綜合的に捉え、縦割り文学行政で無関係のように思われている各ジャンルが、底の方で繋がっていることを明らかにすることです。それにより文学認識が変わると思います。
なぜ綜合文学的視座で文学の現状を変えなければならないのかと言うと、言うまでもなく現代文学が明らかな斜陽産業になっており、新たな試みも生まれず行き詰まっているからです。こういった状況では各ジャンルの存在意義(アイデンティティ)を定義し直すのが遠回りのようで最も確実かつ有効な方法です。各文学ジャンルの存在意義を認識把握すれば、ジャンル越境ではなくマルチジャンル作家として活躍する作家が増えると思います。エンジェルスの大谷さんのような作家かな(笑)。今まで漠然と可能なように思われていて、実際はぜんぜん存在しなかったマルチジャンル作家が生まれるでしょうね。
どのジャンルでも作家は本が売れず、書いても書いても狭い業界ではなく広い読者からの反応が得られず苦しんでいます。こういった苦しい状況では作家はなりふり構わず足掻く必要があります。が、詩や小説だけに視線を集中していたのでは難しい。文学を綜合的に捉えれば20世紀的な未踏の表現を追い求める前衛ではなく、文学全体を視野に入れた新たな創作が可能になるはずです。
もちろん多くの作家は「んなこたわたしに関係ねーや」でしょうが、特定ジャンルの中にいて試行錯誤して、手持ちの札を使い切ったら認識パラダイムを変えるのが一番良い方法です。奇妙な言い方になりますが石川は純文学系の作家に〝絶望すること〟をお勧めします。根拠のない希望を持っていても結局は絶望する。で、希望いっぱいだった人が絶望すると書かなくなる。絶望から始めた方が希望は持ちやすいし書き続けられる。実際今の、特に純文学系文学の状況は絶望するに値します。本当にヒドイ。文学で優れた仕事を残したいなら手垢のついた手持ち札を捨てることです。
文学金魚は9冊同時に本を刊行するので元気いっぱいに見えるでしょうが、石川は純文学業界に絶望しています。絶望し尽くしているからほんの少しの希望の道筋が見える。小手先の斬新さで短期的に目立つ手持ち札もとっくの昔に尽きていると思います。あとは認識系を変えるしかない。今月末は金魚屋新人賞の〆切ですが、行き詰まりの文学の世界に新風をもたらすだろう作品なら、金魚屋は比較的あっさり本を出します。新たな認識を持つ新人作家を求めているのです。
■『2022年11月30日、金魚屋プレスの本、9冊同時刊行!』 ■
■ 金魚屋 BOOK Café ■
■ 金魚屋 BOOK SHOP ■