連載翻訳小説 e.e. カミングス著/星隆弘訳『伽藍』(第37回)をアップしましたぁ。『第五章 大部屋の面々』は収容所でいっしょになった人々の、カミングスさんによる人物評です。ほんでカミングスさん、まー口が悪い。その人の本質を衝いたあだ名を付けまくり、底の底まで人の性格や本質を描く、あるいは見切る。とぉっても辛辣です。
こういう辛辣さを持つ物書きは、圧倒的に詩人に多い。詩は本質的に、論理を超越した直観的真理をズバリと表現する文学ですから、人間に対しても身も蓋もない批評を下したりするんですね。鶴山裕司さんはある詩人について「目から鼻に抜けるようなバカ」と言ってましたな(笑)。そういった詩人と実際に付き合うのは大変ですが、辛辣な人物評を為す詩人の方が皆と仲良しといった詩人より信頼できるところがあります。
じゃ小説家は辛辣ではないのかということになりますね。少なくとも表面的には詩人のようには辛辣ではないことが多いです。小説の場合、推理小説などではもんのすごく頭の切れる探偵や犯人が登場しないと面白くないですよね。でもいわゆる純文学になると、その逆に人間の愚かさを描くことが多くなる。嫌なヤツ、愚かな人は小説家にとって貴重なわけです。そういう人に会って、お腹の中でどう思っているかは別として、「へぇ~君は面白いなぁ」と取材してしまうのが小説家の性といふものです。
どんな職業でも、長年それに携わりプロになると、その職業ならではの性格が形作られることがしばしばあります。一口に文学といっても短歌、俳句、自由詩、小説、演劇で書き手のティピカルな性格は自ずと異なります。全文学ジャンルのなかで、一番陽気で前向きな人が多いのは短歌ですね。自己の内面を赤裸々に表現する歌人が一番人として付き合いやすい。面白いものです。
■ e.e.カミングス著/星隆弘訳 連載翻訳小説『伽藍』『第五章 大部屋の面々』(第37回)縦書版 ■
■ e.e.カミングス著/星隆弘訳 連載翻訳小説『伽藍』『第五章 大部屋の面々』(第37回)横書版 ■
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