ラモーナ・ツァラヌさんの連載小説『思い出の谷』(一)をアップしましたぁ。ラモーナさんの新作小説です。ラモーナさんの作品では初めてルーマニアを舞台として、ルーマニア人しか登場しない物語です。それもあってか完成度の高い小説になっています。ただ特殊な小説ではなく内容は人類共通のものです。作者がルーマニア人だと知らなければ、普通に日本語で書かれた小説としてスラリと読めると思います。
外国人が、しかも大学から日本語を学び始めた外国人が、日本語で小説を書くのはスゴイことです。しかし書き始めれば否応なく日本語文化の中で評価されてしまう。当然と言えば当然ですが厳しいものです。
ラモーナさんの小説に対しては、もちろん編集部からかなりダメ出しが出ています。それをくぐり抜けての作品発表であるのは言うまでもありません。ただダメ出しが出るのは外国人が書いた小説に対してだけではありません。日本人が書いた小説に対しても編集部などから当然ダメ出しが出ます。
作家が自分の作品に自信を持っているのは基本的に良いことです。しかし作品を世の中に出す際には多かれ少なかれダメ出しが出る。それに耐えられないで創作の現場を去って行く作家はとてもに多い。ほとんどの作家が「なぜ俺の、わたしの作品の良さがわからないの」と思って(怒って)いつしか創作をやめてゆきます。厳しいダメ出しを受けると「ダメ出しを出した方が間違っている」とプイと顔を背けがちです。
しかしそれではまず間違いなく作品は良くならない。世の中に出てゆくことはできません。会社に勤めていればダメ出しが出るのは当たり前で、創作は自由だからダメ出しなど無視すればいいというのは間違っています。創作を世の中に発表し一定の社会的評価を得ることは、会社での厳しさとなんら変わりません。ダメ出しの出ない表現は無駄です。自己満足と仲間内の誉め合いで良しとする表現は、社会の表舞台に立てば溶けてなくなります。注目されれば毀誉褒貶の吹き溜まりになるのは当たり前。つまり四方八方からダメ出しが飛んでくる。
ある程度信頼できる編集部や他者からダメ出しが出たら、カーッと来ても、よーくよーく考えてみる必要があります。ダメ出しを無視するのは逃げです。たいていの場合、そこで終わってしまう。創作は自由な表現だとはいっても、本当の自由を得るためには高い社会的レベルをクリアしなければならない。プロ作家と呼ばれる特権的存在は、そういう高いハードを超えているから羨望されたりするわけしょう。努力が必要です。ラモーナさん、打たれ強いです。
■ ラモーナ・ツァラヌ 連載小説『思い出の谷』(一)縦書版 ■
■ ラモーナ・ツァラヌ 連載小説『思い出の谷』(一)横書版 ■
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