小原眞紀子さんの連作詩篇『Currency』『球』(第20回)をアップしましたぁ。金魚屋から『文学とセクシュアリティ-現代に読む『源氏物語』』を好評発売中の小原さんの連作詩篇です。今回は中心と周縁ですね。
師宣はく
総量は定まっている
豊かに潤う地あれば
水位の低い土地もある
そしていずれ
高いところから低いところへ
流れるものは
文化と水
そして欲動
中心を担う者らが
円を描く
海の中で
我々は距離に対し
敏感でなくてはならない
愚かな者たちが
ときおり円環の縁で
水しぶきをあげる
それは高く
高くあがってすぐ落ちる
一本の細い
細い線を引いて
(小原眞紀子『球』)
現代は高度情報化社会で、それはさらに進んでゆきます。情報が溢れているわけですが、その中で個々の人間は情報を発信しなければならない。ただほとんどの個人の情報発信はポジション・トークです。自分はこういう立場なのでこう思う、こうしてほしい、こうあるべきだという発言です。ただポジション・トークはポジションが変われば当然内容が変わる。絶対的に正しいポジションなど存在しないということです。
では情報化社会をどう生き抜けばよいのか。まずは相対化ですね。小原さんの詩を引用すると「高いところから低いところへ/流れるものは/文化と水/そして欲動/中心を担う者らが/円を描く/海の中で/我々は距離に対し/敏感でなくてはならない」ということです。
情報化社会になっても中心は存在しまず。それはマスの欲望によって形作られる。この欲動はほぼ普遍的です。違うのは現代ではそれに向かって渦を巻くように大量の情報が円を描くことです。ただ中心の本質を探るとそこには何もない。求心力だけが存在する。現代ではそれがはっきりしている。その求心力に向かって渦巻き円を描く情報に距離を取り相対化しなければなりません。でないと情報に翻弄されてしまう。情報の変化は素早い。だけどパターンは必ずあるのです。
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『球』(第20回)縦書版 ■
■ 小原眞紀子 連作詩篇『Currency』『球』(第20回)横書版 ■
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